「法人情報活用を生業とした目から見たROBINS」について(後編)

JIPDEC客員研究員 永山徳雄
(元 (株)東京商工リサーチ調査取材本部本部長)

 サイバー法人台帳ROBINS(以下、「ROBINS」と言います。)は、法人番号等で企業に関する行政のオープンデータや民間のデータを連携させて活用する法人情報データベースです。

 信用調査会社である東京商工リサーチにおいて、長年法人の調査に携わってきた経験とキャリアから、後編では、企業信用調査の体験談や法人情報活用の「これから」についてお話しします。

企業信用調査のこれからについてお話しする前に、いくつかの企業信用調査での体験談を披露させていただきます。

6.これまでで印象に残った企業信用調査の体験談
(1)新規企業が成長するかしないか —A社の場合—
 1980年、外神田の雑居ビルの一室で最初に取材したA社は、1975年に創業した海外資 本の従業員 数十名の電子部品商社で、主に米韓台相手の交易を行いながら秋葉原に小売店舗を構えるというユニークなビジネスモデルを構築していました。パソコンの本格普及とバブル景気の追い風を受け、パソコンショップを日本全国に展開していました。1987年1月に店頭公開(現・ジャスダックス市場)し、最盛期には売上高約1000億円、20店舗、従業員約500人を数えました。しかし、性急な事業拡大やバブル崩壊による金利負担等から経営が悪化し、いくつかの資本提携、事業譲渡を経て2002年に廃業となりました。

(2)いろいろな意味で危ない企業を見極める —P社の場合—
 P社の本社事務所を訪問した際に、まずは違和感を覚えました。事務所社内の机や備品、帳簿類の配置、そして従業員の態度等ビジネス臭が漂わないのです。また、会社沿革を取材する中で矛盾が数多く出てきました。具体的には創業時の事業内容、創業者と現在の事業目的や代表者との関係に一貫性が乏しく、商業登記の内容も商号変更、本店移転、代表者変更が多く、いわゆる「休眠会社」登記を利用して起こした会社と思われました。
 P社は取り込み詐欺会社でした。このような会社は、展示会やホームページで見たと言って新規取引を持ちかけ、初めの小口取引では即金決済等きちんとした支払いを繰り返します。大量取引ができるようになると意図的に代金を踏み倒すという違法行為を行い、最後には事務所を閉鎖して倒産させるという手口を繰り返し行うものです。

(3)経営危機にある企業の見極め —上場会社の場合—
 上場企業の場合、『有価証券報告書』の継続企業の前提に関する注記(以下、「GC(ゴーイングコンサーン)注記」という)をチェックすることで経営危機「予備軍」を把握することができます。
 GC注記は、事業継続のリスクを示すもので、業績や財務の悪化で事業の先行きに不透明性が高まったと判断された際に附記され、投資家に注意を促す意味を持ちます。また、GC注記には至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載される「継続企業に関する重要事象」もあります。
 GC注記が必ずしも経営破綻を意味するものではありませんが、事業縮小や上場廃止に繋がるリスクを見極めることができます。(監査法人変更のタイミングにも注意が必要です。)

 以上、3社の企業信用調査の体験談をお話させて頂きましたが、企業は生き物であり、常に経済環境の変化に適合しなければ生き残っていけない存在です。その企業の実在確認とビジネスモデルの有効性・実在性を常にチェックすることが大事なことと考えます。

7.「社名」×「ROBINS」検索で体験できる新たな世界
 2017年12月よりJIPDECは、「ROBINSビジネスレポート」という新たなサービスをユーザー会員向けに開始しました。それはインターネットの中で散在している法人番号に紐付くオープンデータなどの法人活動状況を集約し、統一されたフォーマットで分かりやすく提供するものです。
 企業信用調査の第一歩となる相手先企業の「特定」や「活動状況の確認」に関しては、「ROBINS」を通じて「3つの実在」確認をワンストップでできるようになりました。

  • 法的実在確認
  • 事業所としての物理的実在確認
  • 事業継続の実在確認

「ROBINS」の活用シーンを利用者ごとに想定してみましょう。

(1)事業者・・・「取引先」企業のチェック
 名刺交換した相手の勤務先や営業前の相手先企業等の妥当性をチェックする第一歩となります。詳細情報や与信情報の取得判断の選別(スクリーニング)に活用すれば、「取引先」審査の予算配分を効率化することができます。

(2)一般の利用者・・・TVニュースや新聞、雜誌記事の「深読み」
 日常的に目にするニュース記事や著名人の「経歴」等に登場する企業に関して、一歩踏み込んだ情報を取得し、それを基にした洞察=深読みを可能とします。複数社のチェックを無料で行えることは懐にも優しいサービスです。
Web上のニュース記事に登場する企業名に「法人番号」をシステム的に埋め込めば、システム連携により自動的に「ROBINS」チェックが可能となる日も来るでしょう。

(3)官公庁・・・「基幹システム」に登録された/登録する企業の概要チェック
 自治体等官公庁職員はWeb上のセキュリティ問題もあって、各自のPCからインターネットの様々なサイトにアクセスすることが難しくなっています。各自治体や政府機関が所有する企業情報や新たな申請時の企業情報に関して信頼された「ROBINS」経由で情報チェックを行える体制にすれば、当該企業の属性情報がワンストップで取得することができるようになり、業務の効率化や様々なコンプライアンス・チェックにも活用が可能となります。

(4)海外・・・「英文社名」による海外からのアクセス
 現在、「国税庁法人番号公表サイト」に英文社名/英文住所の登録が追加されています。
登録法人から見ればグローバルな情報発信が可能となり、新たなビジネスチャンスが見込まれます。

8.企業調査のこれから
 「与信」調査・判断については、インターネット上の情報を活用した様々なアプローチやデータ連携によるビッグデータ解析を活用する試みがなされています。
 例えば、EC取引・通信販売企業の売掛金、在庫残高履歴情報等に基づく事業者向け運転資金貸付サービスなどが有名です。
 企業間取引では「決算書」分析(倒産予測モデル)だけではなく、「ペイメント」情報(支払日に約定通りの支払方法で決済がなされたか、早めたか、遅れたか)を横断的に収集(複数社間で情報を共有)することでスコア化し、「支払条件」変更等の判断(取引中止を含む)に活用される事例(欧米大手企業では一般的)も見られます。また、米国では「事業所」単位での物流量の変化から企業活動の兆候(本社の経営状況)を洞察する方法もあります。

9.最後に
 「ROBINS」に集約されるデータは政府機関や公知のオープンデータ等に社会保険労務士等信頼できる「第三者確認」を経た信憑性の高い情報を付加したものです。法人の「法的実在確認」とデータ登録時点での「事業活動の実在確認」(休眠会社ではなく実際の事業活動を実在する事業所で行っていたこと)をWeb上で見える化した画期的なサービスといえます。
 今後、オープンデータの推進や民間企業とのデータ連携のさらなる拡充により、法人番号連携の社会的共通基盤である「ROBINS」が、様々な利用者「体験」を実現し、企業信用調査の有効なツールだけに留まることなく「新たなビジネス」創出に大きく貢献して行くことを期待します。


以上

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